長時間労働は満足度を上げる?
とある面白い記事を見つけたのでご紹介します。
以下は、企業・従業員マッチパネルデータを用いた労働市場研究からの報告です。
「労働時間が長くなるほど、労働者の仕事満足度が増していくような関係が見出されることが分かった。その他の条件を一定とした場合、週当たりの労働時間が55時間を超える辺りから、仕事満足度が上昇していくことが観察される。つまり、労働時間が長くなるほど、仕事がおもしろくなり、仕事から得られる非金銭的な満足度が上がっていく様子が観察できる。しかし一方で、メンタルヘルスと労働時間との関係については、仕事満足度とのような関係性は見いだせず、労働時間が長くなるほどに悪化する傾向があることも分かった。
行動経済学の領域では、人々には、自身の健康に過剰な自信をもってしまう(overconfidence)傾向や、現在の状態が将来も続くと考えてしまうバイアス(projection bias)が存在することが指摘されている。本稿の結果は、人々がこうした認知の歪みを持っていることにより、労働者は「自分は大丈夫」と考え、自身の健康を過信しがちとなってしまう結果、仕事満足度のほうを優先させてしまい、長時間労働になりやすい可能性があることを示している。特にこうした傾向が強いのは、エネルギッシュなタイプの労働者や、職場の同僚がメンタル不調に陥った場合に「士気が下がるので迷惑だ」と考えるようなタイプの労働者などに顕著にみられることも分かった。
昨今では、自律的な働き方、一般として働く時間や時間帯を自由に決定できるような働き方の拡充が展望されているが、本稿の結果は労働者の裁量に完全に委ねた労働時間の決定は健康を損なう可能性を高める可能性を示しており、労働時間に法的な上限規制を設けるなど、第三者による介入が必要であることを示唆している。また、本稿の結果は、従業員の「仕事満足度」が高いからといってストレスがないと判断することは危険であり、満足度以外の指標も併せてみながら従業員のストレスチェックを総合的に行っていく必要があるといえる。」
1週55時間といえば、長時間労働です。1月60時間以上時間外労働をしている計算になります。
その場合、仕事の満足度が高い、という結果なんだそうです。
仕事を長時間していることで、仕事をしている自分に酔う、ということなのかもしれませんが、これが続くと本人が気づかないうちに心疾患や脳疾患を患ってしまって、体調不良、メンタル不調へと陥ってしますのでしょう。
気を付けないといけないのは、本人からの「頑張ります」「大丈夫です」「まだいけます」という言葉を鵜呑みにしないことです。
大事になると、本人ではなく家族から訴えられます。
「本人が大丈夫って言ったから」は理由になりません。
生産性のない仕事を長時間して、「仕事している!」と誇らしげに言われても困る、という事業主の言い分も聞こえてきそうですが、生産性のない仕事の指示を出しているのは事業主ですので、改めて、自社の仕事内容を精査してみてはいかがでしょうか。